「エコキュートを設置して数年、一度も水抜き(タンクのメンテナンス)をしたことがない……」 「最近、お湯に白いカスが混ざっている気がする……」
この記事にたどり着いたあなたは、今まさにそんな不安を抱えているのではないでしょうか?
取扱説明書には「年に2〜3回推奨」と書かれている水抜き。実は、多くのユーザーがその存在を知らず、数年間放置してしまっています。
結論から言います。 「今まで一度も水抜きをしたことがない」という場合でも、今すぐにメンテナンスを始めるべきです。

ただし、長期間放置していたからこその「注意点」があります。この記事では、元住宅設備業者監修のもと、以下のポイントを分かりやすく解説します。
- 数年間水抜きをしなかった場合にタンク内で起きていること
- 今から初めて水抜きをする際のリスクと注意点
- 初心者でも失敗しない「正しい水抜き手順」
- 自分では対処できない「業者を呼ぶべき危険サイン」
この記事を読めば、あなたの家のエコキュートを安全にメンテナンスし、寿命を延ばすための正解がわかります。
そもそも「エコキュートの水抜き」とは?なぜ必要なの?
エコキュートの貯湯タンクは、水道水を温めて貯めておく巨大なポットのようなものです。水道水は一見きれいに見えますが、微量の不純物(ミネラル分、カルシウム、マグネシウム、砂など)が含まれています。
タンクの底には「ヘドロ」のような汚れが溜まる
毎日お湯を使っていても、タンクの底にある水は完全には入れ替わりにくい構造になっています。そのため、水道水に含まれる不純物が沈殿し、数年かけてタンクの底に溜まっていきます。
これを排出する作業が「水抜き(タンクの排水)」です。

水抜きをしないと起きる3つのリスク
「今まで何もしなくても使えていたから大丈夫」と思うかもしれませんが、リスクは静かに進行しています。
- お湯が汚くなる・臭くなる 沈殿した汚れが舞い上がり、浴槽のお湯に「黒い粒」や「白いカス」が混ざるようになります。また、衛生状態が悪化し、お湯からカビのような臭いがすることもあります。
- エコキュートの寿命が縮む(故障の原因) タンク内の汚れが配管やフィルターに詰まると、無理な負荷がかかり、ヒートポンプユニットや循環ポンプの故障につながります。修理費用は数万〜数十万円かかることも。
- 電気代が上がる(効率低下) 汚れが熱交換器などに付着すると、お湯を温める効率が下がります。結果として、同じ湯量を作るのにより多くの電力が必要になり、電気代が高騰する原因になります。

「5年〜10年以上」水抜きしたことない場合、今すぐやっても大丈夫?
ここで一番の疑問。「長期間放置していたのに、急に触って壊れないか?」という点です。
結論:基本的には大丈夫。ただし「排水口」の詰まりに注意
5年、10年と放置していた場合、タンクの底にはかなりの量の沈殿物が溜まっています。初めて水抜きバルブを開けた瞬間、茶色く濁った水(錆や泥)がドバっと出てくる可能性が高いです。

基本的には今からでもメンテナンスを開始すべきですが、以下の点に注意してください。
10年以上経過している古い機種(特に2010年以前のもの)の場合、バルブのパッキンが劣化しており、一度開けると「バルブが閉まりきらず水が止まらなくなる」というリスクが稀にあります。 不安な場合は、自分で触る前にメーカーや専門業者に点検を依頼するのが無難です。

「水抜き」と「全排水」を混同しないこと
初心者がやりがちな間違いが、タンクの水をすべて空っぽにする「全排水」をしてしまうこと。 日常のメンテナンスで必要なのは、タンク底部の汚れを出す「数分間の排水」だけです。タンクを空にする必要はありません。

【メーカー共通】初心者でもできる!エコキュートの水抜き手順
ここでは、一般的なエコキュートの水抜き手順を解説します。 ※メーカー(パナソニック、三菱、ダイキン、日立など)によって細かな名称は異なりますが、基本構造は同じです。
所要時間:約5分〜10分
準備するもの
- 軍手(火傷防止のため必須)
- 取扱説明書(手元になければスマホで「型番 取扱説明書」と検索)

エコキュートの水抜き手順
まずは安全のため、エコキュート本体(タンクユニット)にある「漏電遮断器」のスイッチを「切(OFF)」にします。 ※カバーの中にスイッチがあります。

タンクへの水の供給を止めます。タンク下部にある「給水配管専用止水栓」を閉じてください。 ※これが開いたままだと、新しい水が入り続けてしまい、排水が終わりません。

タンク上部(カバーの中にあることが多い)にある「逃し弁」のレバーを起こして上げます。これでタンク内に空気が入り、水が抜けやすくなります。

タンク下部にある「排水栓」を開きます。 勢いよくお湯(または水)が排水管へ流れ出ます。この時、タンクの底に溜まっていた沈殿物も一緒に排出されます。

排水時間は約1分〜2分程度でOKです。 濁った水が出てくる場合は、水が透明になるまで出し続けてください。
汚れが出切ったら、以下の順序で元に戻します。
- 排水栓を閉じる。
- 給水配管専用止水栓を開ける。 ※水がタンクに給水される音がします。
- 逃し弁から水が出るのを確認したら、逃し弁レバーを下げる(閉じる)。 ※空気が抜けきり、タンクが満水になった合図です。
- 漏電遮断器を「入(ON)」にする。

これで作業は完了です!翌日のお湯はりから、きれいなお湯が使えるようになります。
主要メーカー別:水抜き時のチェックポイント
基本的な流れは上記と同じですが、メーカーごとの特徴的な呼び名や注意点をまとめました。
Panasonic(パナソニック)
- 特徴: メンテナンス方法が本体にシールで貼られていることが多いです。
- 名称: 「排水栓」と書かれています。比較的わかりやすい位置にあります。

三菱電機
- 特徴: 「キラリユキープ」など除菌機能がついている機種も多いですが、物理的な汚れである沈殿物は水抜きでしか取れません。
- 名称: 「脚部カバー」を外す必要がある機種が多いです。プラスドライバーが必要な場合があるので準備しておきましょう。

ダイキン
- 特徴: ステンレス製で耐久性が高いですが、やはり水質による汚れは溜まります。
- 名称: 「排水栓」に加え、「ストレーナー(フィルター)」の掃除も同時に推奨されています。

日立
- 特徴: 「水道直圧給湯」の機種(ナイアガラ出湯)の場合、タンクの役割が少し異なりますが、それでもメンテナンスは必要です。説明書をよく確認してください。

自分でやるのが怖い…こんな時はプロに依頼しよう
「手順はわかったけれど、やっぱり怖い」「やってみたけど異常がある」という場合は、無理せずプロに頼りましょう。
1. 排水した水が「真っ黒」または「砂利が出る」場合
2〜3分排水しても水が透明にならない、あるいは黒い塊が大量に出てくる場合、タンク内の汚れが末期状態です。DIYの水抜きでは取り切れないため、専門業者による「タンク洗浄(ジャバなどではなく本格的な洗浄)」が必要です。

2. 水抜き栓から水が止まらない場合
古い機種で、パッキンが劣化していると、バルブを閉めてもポタポタと水が漏れ続けることがあります。これは部品交換が必要ですので、すぐにメーカー修理受付か設備業者へ連絡してください。

3. エラーコードが表示された場合
水抜き後に電源を入れた際、エラーコードが出ることがあります(例:お湯が足りない、センサー異常など)。一度リセットしても消えない場合は、点検が必要です。

業者に依頼する場合の費用相場
- 点検・消耗品交換: 1.5万〜3万円程度
- タンク内本格洗浄: 2万〜4万円程度 ※「エコキュート クリーニング」などで検索すると、専門業者が見つかります。

エコキュート水抜きに関するよくある質問(FAQ)
- 水抜きはどれくらいの頻度でやるべきですか?
-
メーカー推奨は「年に2〜3回」です。 最低でも半年に1回、できれば季節の変わり目(3月、9月など)に行うのが理想です。これを習慣にするだけで、10年後の故障率が大きく変わります。
- お風呂の配管洗浄(ジャバ)とは違うのですか?
-
全く別物です。 「ジャバ」などの洗浄剤は、浴槽とエコキュートをつなぐ「追い焚き配管」を掃除するものです。 今回解説した「水抜き」は、お湯を貯めている「タンクそのもの」の掃除です。両方行うのがベストです。
- 水抜きをすると、その日のお湯は使えなくなりますか?
-
使えます。 メンテナンスのための水抜きで捨てるお湯は数十リットル程度(バケツ数杯分)です。タンク内のお湯がすべてなくなるわけではないので、その日の夜も通常通りお風呂に入れます。 ただし、昼間の沸き上げ時間帯に行うと効率が悪いので、お湯を使い切る前か、沸き上げが停止している時間帯に行うのがおすすめです。
- 賃貸物件に住んでいるのですが、自分でやるべきですか?
-
管理会社に確認しましょう。 基本的には使用者が行うメンテナンスに含まれますが、万が一故障させた場合の責任問題が面倒です。「一度もやったことがなく不安なので」と管理会社や大家さんに相談し、専門業者の点検を入れてもらうのが一番安全です。
まとめ:放置は危険!今週末にさっそく「数分間の水抜き」を
エコキュートの水抜きを一度もしたことがないからといって、過度に恐れる必要はありません。しかし、これ以上放置すれば、故障や衛生面でのリスクは確実に高まります。
【今回の重要ポイント】
- 水抜きをしないと「ヘドロ汚れ」が溜まり、故障や電気代上昇の原因になる。
- 今からでも遅くない!まずは取扱説明書を見て「数分間の排水」を行う。
- 10年以上の古い機種は、水漏れリスクがあるため業者依頼も検討する。
- 今後は半年に1回のルーティンにする。

エコキュートの寿命は一般的に10年〜15年と言われていますが、こまめなメンテナンスを行っている家庭では15年以上元気に稼働しているケースも多々あります。
クロノ高い交換費用(40万〜60万円)を払う時期を少しでも先延ばしにするために、ぜひ今週末、初めての「水抜き」にチャレンジしてみてください。やってみれば、驚くほど簡単ですよ!







