「トイレのレバーを回しても水が流れない!」 「タンクの中を覗いてみたら、チェーンが切れていた…」
賃貸物件にお住まいで、突然トイレのチェーンが切れてしまい、どうすれば良いかお困りではありませんか?トイレは毎日使う場所だけに、水が流せない状況は非常にストレスですし、焦ってしまいますよね。

特に賃貸の場合、持ち家とは違って「修理費用は誰が負担するのか?」「勝手に修理しても良いのか?」「どこに連絡すれば良いのか?」といった不安がつきまといます。
この記事では、賃貸物件でトイレのタンク内チェーンが切れてしまった方に向けて、以下の情報を網羅的に解説します。
- 今すぐ水を流すための緊急応急処置方法
- 賃貸における修理費用の負担区分(大家さん負担?入居者負担?)
- 管理会社への正しい連絡手順と伝え方のコツ
- 自分で修理する場合の具体的な手順と注意点
クロノ結論からお伝えすると、賃貸でチェーンが切れた場合、原則として修理費用は「貸主(大家さんや管理会社)」の負担となるケースが多いです。しかし、契約内容や状況によっては例外もあります。
この記事を読めば、焦らず冷静に対処し、トラブルなくトイレを元通りに直すための道筋が見えるはずです。まずは深呼吸をして、一つずつ確認していきましょう。
まずはじめに:トイレのチェーンが切れた時の緊急応急処置
修理の手配や費用の話の前に、まずは「トイレの水が流せない」という緊急事態を解消しましょう。チェーンが切れていても、タンクの中に水が溜まっていれば手動で水を流すことは可能です。
とりあえず水を流す方法(タンクを開けて手動で流す)
トイレのタンクの蓋を開け、直接内部の部品を操作して水を流す方法です。最も確実な応急処置です。


タンクの蓋は陶器製で重く、割れやすいので注意してください。垂直に持ち上げます。手洗い管(水が出てくる蛇口のような部分)がついているタイプは、接続されているホースを外す必要がある場合があります。
ホースはクリップで止まっているか、差し込まれているだけなので、慎重に引き抜いてください。外した蓋は、安全な場所にタオルなどを敷いて置いておきます。
タンクの底に「フロートバルブ(ゴム玉)」と呼ばれる、黒いゴム製のボールのような部品があります。これが排水口を塞いで水を溜めています。通常は、レバーとこのフロートバルブがチェーンで繋がっています。今回はこのチェーンが切れている状態です。


切れたチェーンの先についているフロートバルブ、またはフロートバルブ自体を直接手で持ち上げてください。すると排水口が開き、タンク内の水が便器へ流れていきます。


水が流れ終わったら、フロートバルブを元の位置(排水口の上)に戻して蓋をします。これで水が止まり、再びタンクに水が溜まり始めます。


もしフロートバルブを戻しても水がチョロチョロと流れ続けて止まらない場合は、フロートバルブが排水口にうまくハマっていないか、チェーンがどこかに引っかかっている可能性があります。
位置を調整してください。それでも止まらない場合は、トイレの壁や床にある「止水栓」をマイナスドライバーなどで時計回りに回して水を止めてください。


バケツで水を流す方法(もしタンクが開けられない場合)
タンクの蓋が固くて開けられない、構造が複雑で触るのが怖いといった場合は、バケツを使って水を流すこともできます。


- バケツ一杯(約6~8リットル)の水を用意します。
- 便器の排水口(水が溜まっている部分)に向けて、一気に水を流し込みます。勢いよく流すことでサイフォン現象が起き、汚物が流れていきます。
- 最後に、排水口の臭気上がりを防ぐため、もう一度少量の水を静かに流して、封水(溜水)を作っておきます。
これらの方法はあくまで一時的な応急処置です。毎回行うのは大変ですので、早急に修理の手配を進めましょう。
賃貸でチェーンが切れた!修理費用は誰が負担する?
賃貸物件にお住まいの方にとって最も気になるのが「修理費用」でしょう。トイレのチェーンが切れた場合、費用は大家さん(貸主)が負担するのか、入居者(借主)が負担するのか、その基準を解説します。
原則は「貸主(大家さん・管理会社)」負担
賃貸物件において、お部屋の設備が故障した場合の修理費用は、原則として「貸主」が負担することになっています。これは民法で定められた貸主の義務(修繕義務)です。
特にトイレのチェーン切れは、長年使用したことによる金属疲労や錆びといった「経年劣化」や「自然消耗」が原因であることがほとんどです。入居者が普通に使っていて起きた故障であれば、入居者に責任はありません。修理費用は大家さん側が負担するのが一般的です。


2020年4月の民法改正により、設備の故障によって部屋の一部が使えなくなった場合、その分だけ家賃が減額される可能性も明文化されました。トイレが使えないというのは生活に直結する大きな問題ですので、貸主側も早急に対応する義務があります。
借主(入居者)負担になるケースとは?
では、逆に入居者が費用を負担しなければならないのはどのようなケースでしょうか?主に以下の2つのパターンが考えられます。
1. 入居者の「故意・過失」による破損
入居者の不注意やわざと壊したような場合は、入居者負担となります。例えば以下のようなケースです。
- トイレのレバーを乱暴にガチャンガチャンと操作し続けた結果、チェーンが引きちぎれた。
- タンクの掃除中に誤ってチェーンを強く引っ張って切ってしまった。
- タンク内に異物を落とし、それが原因でチェーンが破損した。


普通に使っていただけであれば過失を問われることは少ないですが、上記のような心当たりがある場合は自己負担となる可能性が高いです。
2. 契約書に「小修繕は借主負担」の特約がある場合
賃貸契約書に「小修繕(軽微な修理)の費用は借主が負担する」といった特約(特約事項)が記載されている場合があります。
この「小修繕」の範囲は物件によって異なりますが、電球交換やパッキン交換などと並んで「トイレのチェーン交換」も含まれていることがあります。この特約が有効な場合、チェーン交換の部品代や作業費は入居者負担となる可能性があります。


まずは、お手元の賃貸借契約書や重要事項説明書の「修繕に関する条項」や「特約事項」を確認してみてください。
勝手に修理して請求しても大丈夫?
「すぐに直したいから、自分で業者を呼んで修理して、後で領収書を管理会社に送ろう」と考える方もいるかもしれません。しかし、これはトラブルの元になるためおすすめしません。
原則は「修理前に管理会社へ連絡し、了承を得ること」です。勝手に修理を依頼してしまうと、以下のようなリスクがあります。
- 「提携業者がいるから安く済んだのに、勝手に高い業者を使った」として、費用の全額または一部の支払いを拒否される。
- そもそも貸主負担の修理だったのか、入居者負担の修理だったのかの判断が事後では難しくなる。


ただし、夜間や休日で管理会社と全く連絡がつかず、水が漏れ続けているなど緊急性が極めて高い場合に限り、事後報告でも認められるケースはあります(民法改正で、急迫の事情がある場合は借主が修繕できるとされています)。ですが、チェーン切れの場合は応急処置で水は止められるため、緊急性がそこまで高いとはみなされないことが多いでしょう。
管理会社・大家さんへの連絡手順と伝え方のコツ
費用負担の原則がわかったところで、実際に管理会社や大家さんへ連絡する手順と、スムーズに対応してもらうための伝え方をご紹介します。
連絡先の確認方法
連絡先は以下の書類などに記載されています。
- 賃貸借契約書
- 重要事項説明書
- 入居時に渡された「入居のしおり」など
- マンションのエントランス掲示板
管理会社が営業時間外の場合は、24時間対応のコールセンターの番号が案内されていることもあります。
電話で伝えるべき内容テンプレート
電話がつながったら、落ち着いて状況を伝えましょう。以下の項目を伝えるとスムーズです。
1. 物件名と部屋番号、氏名
「〇〇アパート〇〇号室の〇〇(氏名)と申します。」
2. 状況(何が起きているか)
「トイレのレバーを回しても水が流れなくなりまして、タンクの中を確認したところ、チェーンが切れてしまっています。」
3. いつからか
「今朝トイレを使った時からです。」
4. 原因に心当たりはあるか
「特に変わった使い方はしておらず、普通に使っていたら突然切れました。(経年劣化であることを暗に伝える)」
5. 現在の状況と要望
「今は応急処置でタンクを開けて流せる状態ですが、不便なので修理をお願いしたいのですが、どのように進めればよろしいでしょうか?」 「修理費用はどちらの負担になりますでしょうか?」



この電話で、管理会社側が業者を手配してくれるのか、それとも「お客様の方で修理をお願いします(費用は後日精算、または自己負担特約の説明)」と言われるのか、対応が決まります。
自分で修理する?業者に頼む?判断基準とメリット・デメリット
管理会社に連絡した結果、「ご自身で直せるようなら直していただいても構いません(費用は負担します/特約により自己負担です)」と言われた場合や、すぐにでも直したい場合、自分で修理するという選択肢も出てきます。
ここでは、自分で修理する場合と業者に依頼する場合のメリット・デメリットを比較します。
自分で修理するメリット・デメリット
メリット
- 部品代(数百円〜千円程度)だけで済むため、安上がり。
- 部品さえ手に入れば、その日のうちにすぐ直せる。
デメリット
- 適合する部品を自分で探さなければならない。
- 交換作業に慣れていないと時間がかかったり、失敗して水漏れなどの二次被害を起こすリスクがある。
- 手が汚れる、タンクの蓋が重いなど、作業自体が面倒。
- 賃貸契約によっては、自分で直したことが原因で後々トラブルになる可能性がゼロではない。
管理会社指定の業者に頼むメリット・デメリット
メリット
- プロが作業するので確実で安心。
- 部品選定や作業の手間が一切ない。
- 貸主負担の場合、費用の立替や請求の手間がない(管理会社が直接業者に支払うことが多い)。
デメリット
- 業者のスケジュール調整が必要で、修理完了まで数日かかる場合がある。
- 作業当日は立ち会いが必要になることが多い。
- もし自己負担となった場合、自分でやるより費用(出張費・技術料で1万〜2万円程度)が高くなる。
結論:基本は管理会社へ依頼。自分でやるなら必ず許可を得てから。
賃貸物件の場合、基本的には管理会社に連絡し、指示を仰ぐのが最も安全で確実です。特に費用が貸主負担になるケースでは、お任せした方が手間がありません。
「自分で直した方が早いし安い」と感じる場合でも、必ず管理会社に「自分でチェーンを交換しても良いか?」「その場合の部品代は請求できるか?」を確認してから行いましょう。無断で修理を行うと、退去時に「入居時の状態と違う(純正品ではない部品がついている)」として原状回復費用を請求されるリスクもゼロではありません。


【画像解説】トイレのチェーンを自分で交換・修理する方法
管理会社から「自分で修理してもOK」と許可を得た場合や、自己責任で直すと決めた方向けに、トイレチェーンの交換手順を解説します。作業自体はそれほど難しくありません。
必要な道具


- 新しい交換用チェーン
- マイナスドライバー(止水栓用)
- ゴム手袋(手が汚れないように)
- ラジオペンチ(古いチェーンが固くて外れない場合にあると便利)
- タオル(水垂れ防止)
交換用チェーンの選び方
新しいチェーンはホームセンターやネット通販で購入できます。価格は数百円〜千円程度です。選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- タイプを確認:大きく分けて「玉鎖(ボールチェーン)タイプ」と「リングタイプ」があります。切れた元のチェーンと同じタイプを選びましょう。
- 長さを確認:元のチェーンと同じ長さ、または少し長めのものを選びます。長さは後で調整できます。
- メーカー・品番が分かればベスト:タンクや便器に記載されているメーカー名(TOTO、LIXIL/INAXなど)と品番を控え、それに適合する純正品を買うのが一番確実です。
- 汎用品(マルチタイプ)でもOK:メーカー問わず使える「万能チェーン」も売られています。どれを買えばいいか分からない場合はこちらを選ぶと良いでしょう。
トイレのチェーンの交換手順
作業中に誤って水が噴き出さないよう、念のためトイレの止水栓を閉めます。壁や床からタンクにつながる給水管の付け根にある溝にマイナスドライバーを差し込み、時計回りに回らなくなるまで回します。


応急処置の時と同様に、タンクの蓋を垂直に持ち上げて外します。手洗い管のホースがある場合は注意して外し、蓋を安全な場所に置きます。


タンクの中を見ると、レバーのアーム部分とフロートバルブ(ゴム玉)が切れたチェーンで繋がっていた痕跡があるはずです。それぞれの接続部分から古いチェーンを外します。固い場合はラジオペンチを使いましょう。


新しいチェーンを、まずフロートバルブ側に取り付けます。次に、レバーのアーム側に取り付けます。


【重要】チェーンの長さ調整 チェーンの長さは非常に重要です。
- 長すぎる(たるみすぎ):レバーを回してもフロートバルブが十分に持ち上がらず、水が流れない、または水流が弱くなります。
- 短すぎる(張りすぎ):常にフロートバルブが少し持ち上がった状態になり、水がチョロチョロと流れ続けて止まらなくなります。
適切な長さは、レバーが元の位置にある時に、チェーンが少しだけたるんでいる状態(玉鎖なら1〜2玉分くらいの余裕)です。アーム側の取り付け位置を変えることで長さを調整しましょう。
チェーンを取り付けたら、止水栓を反時計回りに回して開けます。タンクに水が溜まったら、レバーを回して以下の点を確認します。


- スムーズに水が流れるか?
- 水が流れ終わった後、ピタッと水が止まるか?
問題がなければ、タンクの蓋を元に戻して作業完了です。もし水が止まらない場合は、もう一度止水栓を閉めてチェーンの長さを微調整してください。
応急処置:ビニール紐などで代用できる?
「今すぐ直したいけど、新しいチェーンを買いに行く時間がない」という場合、ビニール紐や結束バンドで代用することは可能でしょうか?
結論から言うと、一時的なら可能ですが、推奨はしません。
ビニール紐などは水に浸かり続けると劣化してすぐに切れてしまったり、結束バンドが他の部品に引っかかって故障の原因になったりするリスクがあります。あくまで新しいチェーンを入手するまでの数時間〜1日程度の「超応急処置」として考え、早急に専用のチェーンに交換しましょう。
トイレのチェーンに関するよくある質問(Q&A)
- 賃貸物件(アパートやマンション)に入居してすぐチェーンが切れたのですが、これも経年劣化ですか?
-
入居直後であれば、前入居者の使用期間も含めて寿命が来ていた可能性が高いです。経年劣化として貸主負担になるケースがほとんどでしょう。すぐに管理会社へ連絡してください。
- トイレのチェーン交換くらいで業者を呼ぶのは大げさですか?
-
いいえ、そんなことはありません。賃貸物件の設備管理は貸主の責任ですので、遠慮なくプロにお任せしましょう。自分でやって失敗するリスクを避けるためにも、業者に依頼するのが確実です。
- トイレのチェーンは火災保険を使って修理できますか?
-
一般的な賃貸の火災保険(家財保険)には「借家人賠償責任保険」や「修理費用保険」が付帯していることが多いです。 「借家人賠償責任保険」は、あなたの過失で大家さんに損害を与えた場合(例:タンクを割って水漏れさせて階下に被害が出た)に使えます。「修理費用保険」は、大家さんに修繕義務があるのに修理してくれない場合などに、あなたが立て替えた費用を補償するものです。 今回のチェーン切れが「経年劣化」であれば保険の対象外となることが多いですが、契約内容によっては使える可能性もあるので、保険会社や代理店に確認してみる価値はあります。
トイレのチェーン交換のまとめ
賃貸物件でトイレのチェーンが切れた場合の対応について解説しました。ポイントをまとめます。


- まずは応急処置:タンクの蓋を開け、直接フロートバルブを持ち上げれば水は流せる。
- 費用負担の原則:経年劣化によるチェーン切れは、原則として「貸主(大家さん)」負担。ただし、契約書の特約で「小修繕は借主負担」となっている場合は自己負担になることも。
- 連絡が最優先:勝手に修理せず、必ず管理会社や大家さんに連絡して指示を仰ぐこと。
- 修理方法の選択:管理会社に業者を手配してもらうのが基本。自分でやる場合は必ず許可を得てから行い、チェーンの長さ調整に注意する。
トイレが使えないのは本当に不便ですが、焦らず手順を追って対応すれば大丈夫です。まずは管理会社へ一本連絡を入れましょう。この記事がトラブル解決の一助となれば幸いです。


