リフォームや新築で壁紙(クロス)を張り替えた直後、ふと壁を見ると「あれ?空気が入って浮いている…?」と気づき、不安になっていませんか?
「施工ミスではないか?」「手抜き工事をされたのでは?」と怒りや不安を感じるのも無理はありません。しかし、実はリフォーム直後の壁紙の浮きには「放っておけば直るもの」と「職人の腕による欠陥」の2種類が存在します。
この記事ではプロの視点から、「リフォーム後の壁紙の浮き」の原因、セルフチェックの方法、業者への依頼の仕方、そしてDIYでの補修方法まで徹底的に解説します。
結論:施工直後の「浮き」は1週間〜2週間様子を見て!
まず、最も重要な結論からお伝えします。 もし、リフォーム工事が終わってからまだ1週間以内であれば、その浮きは「施工不良ではない」可能性が高いです。

なぜ「浮き」は発生するのか?
壁紙(クロス)は、裏面に糊(のり)を塗って壁に貼り付けます。この糊には多くの水分が含まれています。 壁紙は、水分を含むと「伸びる」性質があり、乾燥すると「縮む」性質があります。
職人が貼った直後は、壁紙が水分を含んで伸びている状態です。これが時間をかけて乾燥し、ピンと張り詰めることで美しく仕上がります。この乾燥過程(ドライアウト)において、一時的に空気を含んだようにボコボコと浮いて見える現象が起きます。

これは「湿気による一時的なたわみ」であり、糊が完全に乾けば、壁紙が収縮して壁にぴったりと張り付き、浮きは自然に消滅します。
待つべき期間の目安
- 春・秋・冬(乾燥している時期): 3日〜1週間程度
- 夏・梅雨(湿度が高い時期): 1週間〜2週間程度
まずは、焦って指で押し潰したりせず(これが一番NGです!)、自然乾燥を待つのが正解です。
待っても直らない!これって施工ミス?原因を徹底解剖
「2週間経っても浮きが直らない」「明らかに端っこがめくれている」 この場合は、自然現象ではなく「施工不良」や「下地の影響」が考えられます。主な原因は以下の4つです。

原因①空気抜き(圧着)不足
職人が壁紙を貼る際、専用の刷毛(ハケ)やローラーで空気を追い出しますが、この作業が不十分だと空気が残ってしまいます。これを「エアーが入っている」と言います。

- 特徴: 丸くプクッと膨らんでいる。指で押すと空気が移動する感覚がある。
原因②糊(のり)の量不足・乾燥の早すぎ
糊の量が少なすぎたり、貼ってから圧着するまでの時間が長すぎて糊が乾いてしまったりすると(オープンタイムの超過)、接着力が弱まり浮いてきます。特にエアコンの風が直接当たる場所や、直射日光が当たる場所で起きやすいです。

- 特徴: 壁紙の継ぎ目(ジョイント)が開いている、または端がめくれている。
原因③下地(パテ処理)の問題
リフォームの場合、古い壁紙を剥がした後の「下地処理」が仕上がりを左右します。下地の石膏ボードの継ぎ目やビス穴を埋める「パテ処理」が不十分だったり、パテが乾燥する前に壁紙を貼ってしまうと、後からパテが痩せて隙間ができ、浮きの原因になります。

- 特徴: 帯状に縦に浮いている、ボコボコとした凹凸を感じる。
原因④構造的な動き(家の揺れ・歪み)
木造住宅などの場合、木材の収縮や地震などの振動により、家自体がわずかに動きます。特にドア枠の角や窓周りは力がかかりやすく、壁紙が引っ張られて「浮き」や「シワ」ができやすい場所です。これは職人の腕というよりは、建物の構造上の宿命とも言えます。

【セルフチェック】業者に連絡するべき「危険な浮き」の判断基準
あなたの家の壁紙の浮きが、様子見で良いのか、すぐ連絡すべきなのか、以下のチェックリストで判断してください。
✅ 様子見でOK(正常範囲内)
- 施工後2週間以内である。
- 全体的にうっすらと波打っているように見える。
- 照明を当てると目立つが、日中はあまり気にならない。
- 触ると少し柔らかいが、完全に剥がれているわけではない。
⚠️ 即連絡すべき(施工不良の可能性)
- 施工後1ヶ月以上経過しても直らない。
- 「端(はし)」や「継ぎ目(ジョイント)」が剥がれている。 → これは乾燥しても直りません。放置すると剥がれが広がります。
- 直径数センチ以上の明らかな「気泡」がある。 → 空気が完全に閉じ込められている場合、自然には抜けません。
- ゴミや異物が入っているように見える。 → 浮いている部分に凸凹した硬い感触がある場合、パテの削りカスやゴミが混入しています。
業者への連絡方法と保証について
施工不良が疑われる場合、リフォーム会社に連絡する必要があります。しかし、「クレーマーだと思われたくない…」と躊躇してしまう方も多いでしょう。ここではスムーズな交渉術と保証について解説します。
保証期間はどのくらい?
一般的なリフォーム工事の契約約款では、壁紙(内装仕上げ)の剥がれや浮きに関する保証期間は「1年〜2年」が目安です。
- 大手ハウスメーカー・リフォーム会社: 2年保証が多い
- 地場の工務店・個人業者: 1年保証、または明文化されていない場合も(※民法上の契約不適合責任はありますが、話し合いになります)

契約書や保証書を確認してみましょう。期間内であれば、無償で補修してもらえる権利があります。
業者への伝え方(テンプレート)
感情的に「下手くそ!」と伝えるのは逆効果です。あくまで「相談」というスタンスで連絡すると、業者も誠実に対応してくれやすくなります。
【電話・メールでの伝え方例】 「〇月に工事をしていただいた〇〇です。大変きれいに仕上げていただいたのですが、〇〇の部屋の壁紙で、数カ所『浮き』のようなものが気になっております。 施工後しばらくは乾燥期間が必要と伺っておりますが、1ヶ月経過しても変化がないため、一度状態を見ていただくことは可能でしょうか?」
ポイントは「1ヶ月待ったが直らない」という事実を伝えることです。これにより、「乾燥不足の言い訳」を封じることができます。
補修の方法は?張り替えになるの?
浮きの程度によりますが、全てを張り替えるケースは稀です。
- 注射器による糊注入(軽度): 注射器で糊を注入し、ローラーで圧着する。
- 部分張り替え(中度): 浮いている面の一部分(ボード1枚分など)を張り替える。
- 全面張り替え(重度): 下地からやり直す必要がある場合など。
【DIY】自分で直す!壁紙の浮き補修テクニック
「業者を呼ぶほどでもない」「保証期間が切れてしまった」「数センチの小さな浮きだけ直したい」 そんな場合は、ホームセンターで手に入る道具を使って自分で直すことも可能です。
用意するもの
- 壁紙補修用注射器(インジェクター): 100円ショップやホームセンターで購入可
- 壁紙用接着剤(または木工用ボンド): チューブタイプが便利
- ローラー: 壁紙用、なければスプーンの背でも代用可
- タオル: はみ出した糊を拭く用

手順①注射器で糊を入れる
浮いている部分に針を刺し、中の空気を抜くイメージで少し穴を広げつつ、接着剤を注入します。 ※カッターで少し切り込みを入れてノズルを差し込む方法もありますが、注射器の方が跡が目立ちません。

手順②空気を抜きながら圧着する
注入した糊を全体に行き渡らせるように指で優しくなじませます。その後、中心から外側に向かって、溜まっていた空気と余分な糊を押し出すようにローラーで圧着します。

手順③はみ出た糊を拭き取る
穴から出てきた糊を、濡れたタオルやスポンジで綺麗に拭き取ります。ここで糊が残っていると、後で変色して黄色くなってしまうので丁寧に拭きましょう。

手順④乾燥させる
最後にドライヤーを「弱」で少し離して当てるか、自然乾燥させれば完了です。

【注意】 500円玉より大きい浮きや、天井の浮きはDIYでは難しいです。無理せずプロに相談しましょう。
次回のリフォームで失敗しないための「予防策」
今回の経験を活かし、次回のリフォームや他の部屋の工事をする際に、「浮き」を防ぐためのポイントを知っておきましょう。
ポイント①壁紙選びで「厚手」を選ぶ
リフォームの場合、どうしても古い下地の凹凸が残りやすいです。
- 薄い壁紙・表面がツルツルした壁紙: 下地の粗(浮きや凹凸)がダイレクトに見えてしまいます。
- 厚手の壁紙・表面に凹凸がある壁紙: 下地の粗をカバーし、多少の浮きも目立たなくしてくれます。 カタログには「リフォーム推奨品」マークがついていることが多いので、それらを選ぶのが賢明です。

ポイント②工期に余裕を持つ
「急いで仕上げてほしい」と急かすと、職人はパテが完全に乾く前に次の工程に進まざるを得なくなります。特に冬場や湿気の多い時期は、工期に余裕を持たせることで、十分な乾燥時間を確保でき、トラブルを防げます。
ポイント③空調・換気の管理
工事中、または工事直後に、急激な温度変化を与えないことが大切です。
- 暖房をガンガンにかけて急激に乾燥させる(過乾燥)
- 窓を開けっ放しにして湿気を入れすぎる これらは壁紙の急激な伸縮を招きます。お引渡し直後は、穏やかな室温管理を心がけましょう。
まとめ:焦らず正しく対処すれば、壁紙は美しく蘇る
リフォーム後の壁紙の浮きについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 最後に重要なポイントを整理します。
- 施工後2週間以内の浮きは「乾燥待ち」。触らずに待つのが正解。
- 1ヶ月経っても直らない、端がめくれている場合は「施工不良」の可能性大。
- 業者の保証期間は通常1〜2年。気になったら早めに連絡を。
- リフォームには「厚手の壁紙」を選ぶのが鉄則。
壁紙の浮きを見つけると、せっかくのリフォームの喜びが半減してしまうかもしれません。しかし、その多くは適切な期間待つこと、あるいはちょっとした補修で綺麗に直ります。
過度に心配せず、まずは「期間」を確認してみてください。 そして、明らかに直らない場合は、遠慮せずリフォーム会社に相談しましょう。誠実な業者であれば、必ず納得のいく対応をしてくれるはずです。
あなたの家の壁が、ピンと張った美しい仕上がりになり、気持ちの良い空間になることを願っています。
【付録】よくあるQ&A
- 浮いている部分を指で押したら直りますか?
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施工直後の濡れている状態であれば、押してはいけません。糊が未乾燥の状態で強く押すと、壁紙に「指の跡(へこみ)」がついたり、糊が寄ってしまったりして、逆に汚くなってしまいます。乾いてからも戻らない場合に限り、DIYでの圧着を試してください。
- エアコンの風が当たる場所だけ浮いてきました。
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これは「過乾燥」による収縮、または風による煽りが原因の可能性があります。施工不良とも言えますが、環境要因も大きいです。まずは糊の注入で直るか試すか、業者に「エアコンの風で剥がれてきた」と相談してください。
- 天井の壁紙が浮いて垂れ下がってきました。これは緊急ですか?
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はい、緊急性が高いです。天井のクロスは重力で下に引っ張られるため、一度剥がれ始めると一気に剥がれ落ちてくる危険があります。DIYで直すのは難しく危険なので、すぐに業者に連絡してください。